2024年3月7日

『グロテスク』読了。めちゃくちゃすごい作品だった。

単行本は二〇〇三年に刊行されたらしい。わたしが二十三歳の時だ。こんな素晴らしい小説があったなんて知らなかった。二十三歳の時はブラックな会社に就職していて頭おかしい生活をしていたので、本なんてほとんど読んでいなかった。日経新聞は読んでいたけれど。ちなみに当時日経新聞に連載されていた小説はアイルケだった。割とクソだった。

『グロテスク』の時代にあった女性の生きにくさは確かに地獄のようでもあって、今の時代は良くなっているけれど、一部はまだかなり共感できる部分がある。地獄のような社会をサバイブしていかなければならない女性たち。苦しくなりそうだけれど、語り手の女性の磨かれた悪意のせいか、痛快さがあった。

それにしても娼婦って何なんだろう。確かにいい仕事ではないと考えているけれど、そんなに自分たちと全く異なった人間なのか。「娼婦でない人たち」は「娼婦」を恥ずべき存在みたいにあっけらかんと自分と切り離して考えすぎなのではないか。映画『哀れなるものたち』でサバサバと娼婦になる主人公には爽快感があった。